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工場や製造現場の静電気対策|基本から具体的な方法まで紹介
製品豆知識2024/11/20
生産障害や機器の誤作動など、様々なトラブルの原因となる静電気。工場や製造現場において静電気対策は必須であり、生産性にも大きな影響を及ぼします。
この記事では、工場や製造現場で用いられる静電気対策についてまとめました。静電気対策の基本から具体的な方法まで分かりやすく解説します。
工場や製造現場における静電気対策の基本
静電気対策の基本は、静電気の帯電量を可能な限り小さくすることです。その方法として、「静電気を逃がす」「静電気の発生量を減らす」この2つが有効であると考えられています。工場や製造現場では、これらを踏まえた上で様々な静電気対策が行われています。代表的な静電気対策の方法を一覧にまとめました。
・静電気を測定する(発生有無、発生箇所の特定)
・アース(接地)を取る
・湿度管理を行う
・除電器(イオナイザ)や除電ブラシを使用する
・帯電防止剤を塗布する
・帯電しないものに変える
・電位差を作らない工夫をする
それぞれの静電気対策について、具体的に見ていきましょう。
静電気を測定する
静電気対策に取り組むにあたり、まずは静電気の測定が必要です。「表面電位計」または「静電電位測定器」と呼ばれる専用の機器で、静電気の有無や発生量、発生箇所などを調査します。
静電気測定器には、手に持って測定するハンディ型と、ライン据え置きで測定を行うライン設置型があります。ハンディ型の静電気測定器は、持ち運んで任意の場所で測定できるのが特長です。対象物に向けるだけで帯電量を測ることができます。一方、ライン設置型の静電気測定器は、対象範囲の常時測定が可能です。リアルタイムでの測定で異常を素早く検知します。
アース(接地)する
アース(接地)は、基本的な静電気対策です。対象物が導体である場合は、アースによる静電気対策が有効です。導体から大地へと電気が流れる経路を作り、発生した静電気を逃がします。アースをすると帯電しないため、静電気による様々なトラブルを防止できます。
アースは、電気を通しやすい金属などの導体に効果が大きいのが特長です。一方で、プラスチックやゴムなどの電気を通しにくい絶縁体には効果がなく、別の対策が必要になります。
▼アースによる静電気対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
湿度管理を行う
静電気対策の一つに、湿度管理を行う方法があります。静電気の発生と湿度には密接な関係があり、加湿によって静電気が発生しにくい、溜まりにくい環境を作ることが可能です。一般的に、相対湿度が65%以上になると静電気の発生が抑えられ、仮に静電気が発生したとしても、空気中の水分を伝って自然に逃げていくといわれています。
ただし、湿度管理による静電気対策には、いくつかの注意点があります。湿度が高い環境下では、結露や錆、腐食などが発生しやすく、工場の設備や機器に悪影響を及ぼす可能性があります。また、広範囲を同じ湿度条件で管理するのは容易ではなく、高いコストがかかることも難点です。
除電器(イオナイザ)や除電ブラシを利用する
除電器(イオナイザ)は、静電気をイオンで中和し、除電を行う装置です。除電器は、プラスイオンとマイナスイオンの両方を発生させることができ、対象物がプラスとマイナスのどちらに帯電していても、電気的に中性な状態にすることができます。電気的に中性な状態とは、静電気がない状態を意味します。
導体はアースで対策するのが一般的なため、除電器は主に絶縁体に使用します(絶縁体はアースできない)。また、広範囲型の除電器は、広い空間の静電気対策に効果を発揮します。イオンを空間全体に行き渡らせることで、静電気による異物付着などのトラブルを防止します。
除電ブラシとは、金属繊維などの導電繊維の自己放電を利用して、静電気を除去するツールです。特に高電圧の除電に効果的です。また精密機械ではないためメンテナンス費用もかかりません。
▼除電ブラシについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
帯電防止剤を塗布する
帯電防止剤には、静電気の発生や帯電を防ぐ効果があります。除電したい対象物に塗布したり、スプレーで吹き付けたりして使用します。帯電防止剤を塗布すると、界面活性剤の被膜ができます。界面活性剤には空気中の水分を吸着する作用があり、対象物の表面は電気が流れやすい状態となります。これにより静電気が逃げやすくなり、帯電を防止できます。対象物の表面に導電性を付与して除電を行う方法なので、帯電防止剤は導体にも絶縁体にも使用できます。
帯電防止剤は手軽で簡単な静電気対策ですが、時間の経過や摩擦による剝離で効果が減少します。また、対象物の材質によっては、帯電防止剤の使用で表面状態が変わるおそれがあり、注意が必要です。可能であれば、帯電しにくい素材に変えるなどの恒久的な対策を検討するといいでしょう。
帯電しにくいものに変える
帯電防止剤の塗布では一時的な対策となるため、材料を帯電しにくい素材に変えることも有効です。導電性の金属粉末やカーボン粒子を練り込むなど、導電化処理を行うことで帯電を防止する方法もあります。素材の変更にはコストがかかりますが、帯電防止剤を使用するよりも安定した効果が期待できます。
電位差を作らない工夫をする
電位差を作らない工夫をすることで、放電現象を防ぐことができます。工場や製造現場では、静電気の発生そのものを抑えるために様々な対策がとられています。代表例として、高電圧発生部(電位が高いもの)は排除する、排除不可の場合は高電圧発生部をシールドして周囲への影響がないようにする、といった対策が挙げられます。
また、接触面積や接触回数を減らすこと(出来れば無くす)や、ワークの剥離をゆっくり行うことも、静電気の発生量(帯電量)を減らす対策の1つです。
工場や製造現場における静電気対策の具体的な方法
工場や製造現場では、実際にどのような静電気対策が行われているのでしょうか。ここでは、静電気対策の具体的な方法を以下のパートに分けて紹介していきます。
・EPA(静電気放電保護区域)の設定
・人体の静電気対策
・設備や工具の静電気対策
・製品の静電気対策
・帯電量の管理と定期点検の実施
それでは順番に見ていきましょう。
EPA(静電気放電保護区域)の設定
静電気対策でまず重要になるのが、EPAの設定です。EPAとは「ESD Protected Area」の略で、日本語に訳すと「静電気放電保護区域」という意味になります。「ESD保護区域」「静電気対策エリア」とも呼ばれ、ガイドラインに沿って静電気対策を実施したエリアのことを指します。EPAでは静電気が完全にコントロールされており、電子部品や基板などのESDS(静電気敏感性デバイス)を安全に取り扱うことができます。
EPAには以下のような要件があります。
・アイテムの要求事項に則り、静電気対策を行う
・標識等を使用して、エリア内とエリア外を明確に区別する
・導体はアースに接続し、同電位の環境を維持する
・絶縁物はなるべく排除する、または静電対策品に置き換える
・絶縁物の静電気対策を適切に施す
なお、EPAの設定範囲には制限がなく、作業環境に応じて自由に設定できます。部屋全体や工場全体、または作業机一台からでも設定が可能です。
人体の静電気対策
人体は、静電気の一番の発生源ともいわれています。しっかりと静電気対策を行うことが重要です。
リストストラップ
リストストラップは、作業台で手を使って作業を行う工程に多く用いられます。人体は導体に近いためアースを取ることが非常に有効な静電気対策です。人体の静電気を、手首に巻き付けたバンドからアースヘ逃がす構造になっており、リストストラップを装着していれば、人体は静電気を常に逃がせる状態のため、静電気の影響を与えずに作業が行えます。人体からの放電を防止することで、静電破壊のリスクを低減します。
作業着
静電気対策が必須の現場では、帯電防止機能付きの作業着やエプロン、スモックなどを着用します。作業着に直接アース線を取り付けられるタイプも存在します。静電気の発生や帯電を抑制し、より安全に作業が行えるようになります。
靴
いわゆる静電靴、静電作業靴などと呼ばれるものです。人体に溜まった静電気を靴底から地面(アース)に逃がします。作業場所が室内の場合は、導電性のマットを敷くなど、あわせて床の静電気対策が必要です。
なお、足元の静電気対策として、静電靴以外にヒールストラップを装着する方法もあります。ヒールストラップは靴の上から装着し、静電靴と同等の効果を得られます。
手袋
静電気放電のダメージを受けやすいパーツやデバイスを扱う場合には、帯電防止機能付きの手袋を装着する必要があります。静電手袋、静電気帯電防止手袋などと呼ばれるものです。静電気の発生を抑え、パーツやデバイスの静電破壊を防止します。
ただし、静電手袋だけでは静電気を逃がす経路がないため、リストストラップや静電靴との併用が求められます。
設備や工具の静電気対策
工場内の設備や、現場で使う工具にも静電気対策は欠かせません。どのような静電気対策がとられているのか、具体例を挙げて紹介していきます。
床材・マット・カーテン
人の歩行やカートを使った搬入作業でも静電気は発生します。そのため、施設内の床材やマット、カーテンなどにも静電気対策が必要です。床面の有効な静電気対策には、導電性の床材やフロアマットを敷く方法や、導電性の塗床を施工する方法などがあります。対策された床面は、人体や設備のアース経路としても利用できます。カーテンは帯電防止剤の練り込まれたものや、導電剤が塗工されたビニールカーテンを使用するようにしましょう。
作業机・椅子
作業を行う机には、静電気を防止する素材でできたマット(導電性マット)を敷きます。マットは必ずアース線に接続し、静電気を逃がす経路を作ります。これにより、作業中の静電破壊のリスクを減少させることができます。
作業時に座る椅子にも静電気対策が必要です。主に問題となるのが、背もたれや座面との接触で起こる摩擦帯電と、立ち上がる際に発生する剥離帯電です。解決策としては、静電気対策された椅子に変える、背もたれや座面を帯電防止性のカバーで覆う、などの方法が挙げられます。
棚・台車
保管棚には、帯電防止効果のあるマットやシートを敷きます。静電破壊や異物付着を防ぐために重要なことです。また、運搬を行う際も、帯電防止機能を備えた台車やワゴンを使用します。キャスターに導電性ゴムを採用するなど、静電気を逃がすための工夫が必要です。床からアースを取れるように床の対策も必須です。
工具
工具の静電気対策も重要です。可能な限り、帯電しにくい工具を選ぶ必要があります。例えば、ニッパーやドライバーのグリップには、ゴムやプラスチックなどの絶縁体が使われていることも多いですが、絶縁体は電気を通しにくく、帯電の原因になります。工具の購入や注文をする際は、グリップに導電性素材を採用したものなど、静電気対策品を選ぶことが大切です。
製品の静電気対策
ESDSや製品の静電気対策について紹介します。
除電器(イオナイザ)
除電器(イオナイザ)は、帯電している極性と逆極性のイオンで中和し、除電を行う装置です。多くの製造、加工の現場で導入されています。活用例としては、ESDSを取り扱う作業スペースの除電、コンベア上の搬送物の除電、製品の除電による異物付着防止、などが挙げられます。
除電器には、以下の4つのタイプがあります。
・バータイプ
・ブロアタイプ
・スポットタイプ
・ガンタイプ
バータイプは長い棒状の除電器で、広範囲への高速な除電が可能です。コンベア上の搬送物の除電や大型ワークの除電などに用いられます。
ブロアタイプはファンが内蔵されており、風の力でイオンを吹き出して除電します。小型のものは卓上に設置でき、方向や角度を調整して使用できます。
スポットタイプはノズル状の除電器です。狙った箇所をピンポイントで除電します。
ガンタイプは手に持って使用するタイプの除電器です。イオンを含んだエアで、除電とともに対象物の表面に付着した埃や塵などの異物を取り除きます。異物の再付着も防止できます。
包装・容器・フィルム
ESDSや完成した商品をEPAの外へ移動させる際、静電破壊を防ぐ対策が必要です。対策された専用の袋や容器、帯電防止のフィルムなどで保護することで、リスクを減らして安全に運搬できるようになります。
帯電量の管理と定期点検の実施
静電気対策を実施したら、効果を確認するために測定を行います。帯電量の調査には、「表面電位計」または「静電電位測定器」と呼ばれる専用の静電気測定器を使用します。帯電量を数値化することで、静電気対策効果を検証できます。
また、静電気対策のための設備やアイテム、アースへの接続経路は、定期的な点検が必要です。汚れや劣化がないか、誤った使い方をしていないかなどを調べ、正常に機能していることを確認します。作業者への教育や訓練を実施することも重要です。
まとめ
この記事では、工場や製造現場における静電気対策の基本と具体的な方法について解説しました。安全性や品質の確保に静電気対策は欠かせません。特にESDSを扱う現場などでは、より高度な静電気対策が必要になるでしょう。
静電気対策を適切に行えば、静電破壊や異物付着などのトラブルが減り、生産性が向上します。静電気対策の基本を理解して、安全かつ効率的な作業環境の構築に取り組みましょう。
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ノンスパーク
印刷機、塗工機、フィルム製造機・加工機等の除電に適した静電気を効率よく除電するためのブラシです。
セイデンクリスタル
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セイデンクリスタルUV
防炎性と帯電防止性はそのままに、紫外線を使った作業現場で現場以外からの紫外線侵入を抑え品質安定化に貢献します。
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防炎性能と帯電防止性能はそのままに、光線透過率0.0%の遮光性を持ったフィルムで、暗室用遮光、目隠し効果もあります。
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