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軟質塩ビとは?硬質塩ビとの違いや特徴を解説

製品豆知識2024/04/26

「軟質PVCの特徴を知りたい」、「軟質塩ビと硬質塩ビの違いがわからない」など専門用語・業界用語等の情報を調べるのに悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。軟質PVCの特徴や硬質PVCとの違いを知ることで、専門知識の理解に繋がることと思います。
本記事では、軟質PVCの基礎的だけど外せないポイントを分かりやすく解説します。

1.軟質PVC(軟質塩化ビニル)の基礎知識

軟質PVCは「軟質塩化ビニル(軟質塩ビ)」とも呼ばれ、呼称が異なるだけで同じものを指します。その他にも「軟質塩ビ」、「軟質ポリ塩化ビニル」「軟ビ」「ソフトPVC」「ビニール」等と呼ばれることがあります。

製造過程で塩ビ樹脂(PVC樹脂)に可塑剤という添加剤を混ぜることで軟質PVC(軟質塩化ビニル)となります。可塑剤を含まないPVCは硬質PVC(硬質塩化ビニル)と呼ばれます。では軟質PVCについて深掘りしていきましょう。

1-1.軟質塩化ビニールと軟質PVCは違うの?

PVCは「Poly vinyl chloride(ポリビニルクロライド)」の略称で、熱可塑性樹脂の1つです。
※熱可塑性樹脂とは温めると軟らかくなり、冷やすと硬くなる性質をもっている樹脂の総称です。

PVC(塩ビ)はPP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)と並んで五大汎用樹脂に分類される樹脂とされています(諸説あります)。製造過程で可塑剤の添加量を調整することで硬さ(軟らかさ)をコントロールでき、「軟らかいもの」から「硬いもの」まで用途に合わせ自在に製造できるのはプラスチック素材の中でもPVCだけの特長です。

1-2.軟質PVCの3つの特長

①柔軟性(可塑性)

PVC(塩ビ)へ添加する可塑剤の量を調整することで柔らかさや弾力を自由に調整することができます。

※可塑剤とは
可塑剤はゴムや樹脂に柔軟性や弾性を付与し加工をしやすくすることを目的とした添加剤です。添加する量や種類によって柔らかさを調整できることが特長で、多くの工業製品に使用されています。可塑剤の種類の中でも「フタル酸系可塑剤」は相溶性(なじみやすさ)、耐揮発性、耐寒性などの物性が平均して優れている事から、幅広い分野で使用されています。

②着色性

透明性に優れている材質であり、透明の他にも半透明・色付き・不透明など透明度を用途に合わせて選択できる点が特徴です。

③用途に合わせた機能付与が可能

可塑剤のほかに、添加剤を加えることで機能や特性を付与することができます。非転写性や抗菌性のほかにも帯電防止性や防炎性、耐候性、耐熱性など用途や目的に合わせ選定が可能です。

 

2.軟質PVCの成形方法と用途

2-1.軟質PVCの成形方法一覧

軟質PVCの押出成形

樹脂を注入口からシリンダーに入れ、スクリューと呼ばれるネジを回転させて前方に送ることで、ひき肉機のような操作を行います。この過程で、樹脂は練られ溶融され、口金から押し出されます。この装置は一般的に押出機と呼ばれ、口金の設計によってフィルム、シート、チューブ、パイプなどの製造に適しています。

軟質PVCのカレンダー成形

おそばを作る際と同じ原理を応用し、加熱されたロールの間で樹脂を練りながら溶融させ、複数のロールを通過させて所定の厚さに引き伸ばし、成形する方法です。この方法は、フィルム、シート、レザーなどの幅広い平たい巻物の製品を作る際に利用されます。

軟質PVCのディッピング加工

金属製品や織物、不織布などを塩ビ樹脂溶液に浸漬し、熱乾燥を行うことで均一な皮膜を形成できます。このプロセスによって、ペンチやスパナの取っ手の防護カバー、自転車の荷物かご、テント倉庫用膜材料、地盤強化メッシュ、建築養生メッシュなどが生産されます。

軟質PVCのコーティング加工

片面に塩ビ樹脂溶液を塗布し、熱乾燥処理する加工方法を用いて、塩ビフィルムや繊維材料などを加工します。この方法により高強力膜材料、不燃膜材料などが生産されます。ディッピングより厚み調整がしやすく、厚みのあるものの製造に向いています。

2-2.軟質PVCの代表的製品と用途

農業用フィルム(農ビ)

透明性や防滴性、ハウス内の湿度保持力に優れているため、施設園芸での被覆資材として、外張り用の農業用ビニールや内張り用の農業用ビニール、そしてトンネル栽培用の農業用ビニールとして広く利用されています。

シートやフィルム

軟質塩ビシートは透明性と柔軟性という大きな特長を持っています。配合により着色も容易で、柔軟性も自在に調整できるため、他の素材にはない多くの意匠や機能を付与できます。
また、軟質塩ビシートは塩ビの経済性や耐久性などの特長を持ちながら、さらにウェルダー溶着適性、エンボス適性、印刷適性、他素材との接着性など、優れた加工性を備えています。これらの特性により、日用品から家具や建材、産業用まで幅広い製品や用途に使用されています。

壁紙、化粧フィルム

汚れ防止や防カビ機能を有したものなど、様々な機能の壁紙や化粧フィルムがあります。内装仕上げに使用する建材は建築基準法のホルムアルデヒドに関する規制を受けますが、壁紙のF☆☆☆☆はホルムアルデヒドの放散量が最も少ない等級で、この規制の対象外になります。

ラップフィルム

自己粘着性、柔軟性、伸縮性、透明性などの特性を持ち、ピッタリと包装できる包装材料は、食品加工現場やスーパーマーケットの小分けパックなどの業務用、一般家庭での食品鮮度保持用に広く利用されています。また、防曇性にも優れており、ガスや水気による曇りを防ぐ特性をもっています。

電線

絶縁性、多彩な色合い、柔軟性、耐電圧性、耐候性に優れているため、器具電源コード、ワイヤーハーネス、CVケーブル、屋内配線用ユニットケーブル、フラットケーブルなど、さまざまな用途で塩ビ被覆電線として使用されます。

ホース・チューブ

耐摩耗性や透明性に優れているため、一般家庭での散水用途だけでなく、工業用の耐圧ホースや食品用のホースにも利用されています。

タイルカーペット

この商品の特徴として、従来の長尺カーペットよりも運搬や施工が容易であることが挙げられます。さらに、汚れた部分の交換が容易であり、経済的です。このような特性から、一般的にはオフィスや学校、病院、ホテル、レストラン、店舗などの商業施設や一般住宅で幅広く利用されています。

ビニル床シート

耐久性に優れたシートは、適度な柔軟性と弾力性を備えています。そのため、重い物の設置や台車の使用による凹みや割れが少なく、人が多く出入りする「公共スペース」や清潔な環境を保つ必要がある「クリーンルーム」や「手術室」、および水回りスペースであるトイレや給湯室などで使用され、建物の床を保護します。

ターポリンや帆布

ターポリンや帆布は、合成繊維(ポリエステル、ナイロン)やガラス繊維などと柔軟なPVCシートを組み合わせているため、耐久性があります。そのためトラックシートや建築現場の養生シート、垂れ幕、テントなどに広く利用されています。

ビニールレザー

高い防水性と耐久性、そして手入れが容易で経済的であるという特徴から、車両のシートやロビーチェア、バッグなどに広く利用されています。

空気入りビニール製品

印刷性や柔軟性に優れ、軽量なため、ビーチボールや浮き輪などの空気入りビニール製品に利用されています。

製品例画像

    間仕切りビニールカーテン

    ビニールカーテン

    PVC床シート

    ビニル床シート

    テンチャックケース

    チャック付PVCケース

    農業用ビニールシート

    ビニールホース

    3.軟質PVCと硬質PVCの違い

    3-1.軟質PVCと硬質PVCの違いは可塑剤

    PVCには「軟質PVC(軟質塩ビ)」と「硬質PVC(硬質塩ビ)」の2種類があり、違いについて解説します。前述でも記載した通り、軟質PVCは可塑剤を混ぜることで様々な加工に適用できる柔軟性を付与できる事が特徴であるのに対して、硬質PVCは可塑剤が入っていないことで、硬く強度があることが特徴です。このため軟質PVCと硬質PVCは用途に応じた使い分けがなされています。

    種類 比重 引張強度(MPa)
    軟質PVC(軟質塩化ビニル) 1.16~1.35 6.9~25
    硬質PVC(硬質塩化ビニル) 1.30~1.58 34~62

    3-2.硬質PVCの代表的製品と用途

    パイプ及び関連商品

    塩ビ管と継手は、長い歴史を持つ製品です。水道管や下水道管など、さまざまな用途で使用され、その便利さや経済性、資源性によって、社会の基盤を支える重要な資材として、私たちの生活に大きな貢献をしています。

    硬質平板

    制電性や耐薬品性、難燃性などを付与されており、加工においても裁断、穴あけ、曲げ、接着など様々な加工ができます。また耐久性があり、工業用途としてはプリント基板製造装置や吸排気ダクトなどにも利用されています。一般用途としては看板やディスプレイなどに使用されています。

    雨樋・波板

    耐水性や耐食性などの耐久性に優れ、建物の雰囲気に合わせたデザインを実現できるため、一般住宅用の雨樋から事務所や工場などの大型の雨樋にも広く採用されています。また波板においては住宅向けとしてカーポートやテラスなど透明性や耐久性を生かした用途に広く利用されています。

    サッシ

    PVCサッシは、アルミサッシに比べて断熱性に優れており、結露やカビの発生、腐食の防止にも優れています。

    塩ビ鋼板

    鋼板にPVC樹脂をコーティングすることで、腐食に対する耐性が向上し、玄関ドアなどの住宅設備や自動車の内装部材などにも利用されています。

    硬質シート

    優れた寸法安定性と印刷適性を持ち、二次加工で商品に合わせた形状に加工できるため薬品包装、容器の梱包、導電トレーなどに広く利用されます。

    軟質PVCのよくある質問

    塩ビのベタつきの原因とは?(可塑剤の溶出)

    時間の経過とともに軟質PVCに含まれる可塑剤などの配合剤が表面に浮き出てくる現象で、「ブリード」とも呼ばれます。表面に浮き出た配合剤によりベタつきが発生します。

    軟質PVCと接触していた他のプラスチックが変形・変色したりするのは?

    軟質PVCと他の物質が接触し続けた際に、可塑剤などの配合剤が接触している物質に移行し浸透することで接触している物質に悪影響(変形・変色など)を与えてしまうことがあります。物質同士の可塑剤量を均等にしようとするために発生する現象で「移行(マイグレーション)」と呼ばれます。

    軟質PVCの耐熱温度は?

    軟質PVCは明確な耐熱温度はなく、温度が高くなればなるほど軟化し(熱可塑性)、劣化が早くなります。特に、湿度などの状況にもよりますが、60℃〜70℃の環境下で変形や劣化などが顕著に現れます。

    軟質PVCは燃えますか?

    可塑剤自体が可燃性の物質であることから、可塑剤を含む軟質PVCは本来燃えやすい素材です。燃えやすい素材である軟質PVCに防炎剤などを添加し、防炎性(自己消火性)を付与することができます。防炎性を付与されても燃えない訳ではないので注意が必要です。

     

     

    まとめ

    本記事では、軟質PVCの特徴や硬質PVCとの違いや、製品用途と成形方法について解説しました。

    ・軟質PVCの特徴は柔軟性や加工性に優れたポリ塩化ビニル
    ・軟質PVCと硬質PVCの違いは可塑剤添加による柔軟性
    ・工業資材や建築資材、文具雑貨等の幅広い製品用途

    本記事は石塚株式会社(弊社)が執筆しました。
    弊社は創業以来、60年以上にわたり軟質PVCを加工した「ビニールカーテン等の工業資材」や「手帳カバー等の文具雑貨」などプラスチック製品の製造販売を行っています。
    東京商工リサーチの調査により「ビニールカーテンに関わる売上高No.1」に選ばれました。

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