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工場火災の原因と火災対策|2023年の事例や消防庁統計
製品豆知識2024/07/08
12月から2月にかけてが1年間を通して1番空気が乾燥する時期となります。空気が乾燥することで火災が発生しやすく、工場火災は住宅火災と比較し大規模な火災に繋がりやすく、工場操業の中断による市場への「安定」した製品供給に影響するだけでなく、働く従業員の「安全」も脅かされるため工場火災への対策が必要です。
本記事では工場火災の原因や火災発生リスクと合わせ火災事例を紹介し、工場の火災対策のポイントを経営者や工場の管理者が火災が多い時期に入る前から適切な情報をもとに火災対策に取り組めるよう解説します。
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目次
1.工場火災について
1-1.工場火災とは
工場火災とは、工場で発生する火災を指します。工場は可燃性樹脂などの着火しやすいものの使用や化学物質などの危険物の保管をしていることが多いため、万が一火災が発生してしまうと住宅火災と比較し被害が大きくなるケースが少なくありません。
火災の種類とは
火災には種類があり、燃えている対象物によって5つに分類されます。
- 一般可燃物が燃えて発生した火災=A火災(普通火災、一般火災)
- 引火性液体が燃えて発生した火災=B火災(油火災)
- 電気設備による火災=C火災(電気火災)
- 金属が原因となる火災=D火災(金属火災)
- 可燃性ガスが原因となる火災=ガス火災
1-2.工場火災の件数
東京消防庁のデータによると、2023年1月〜9月の工場や作業場での火災発生件数は1,275件で、2022年の同時期と比較し4.4%増の結果となっています。また負傷者は同期間で179人(前年同期間5.2%増)、死者が発生した工場火災は4件となっています。都道府県別で見ると大阪府が90件と一番多く、次いで愛知県の86件、埼玉県の82件となります。
1-3.工場火災発生のリスク
①人的被害のリスク
火災から逃げ遅れてしまうことで、火傷やケガなどの従業員の被害や最悪の場合死亡事故のリスクに繋がります。
②工場損壊、設備焼失等の物的被害のリスク
火災規模によっては工場建屋の損壊や製造機器などの設備の焼失による事業継続に影響しかねない物的被害のリスクがあります。事業継続ができたとしても再開までに時間を要し、顧客が離れてしまうリスクがあります。工場の操業が中断されることにより、市場に広範な影響を与え損害を与えかねません。
③環境汚染のリスク
工場火災により粉塵や有毒ガスが発生した場合、周囲の環境汚染に繋がるリスクがあります。粉塵、有害物質による大気汚染や、河川への有害物質の流出による水質汚染、畑や田んぼへの土壌汚染など自社工場だけでなく周辺地域へ影響が及ぶ恐れがあります。
④爆発などの二次災害のリスク
火災により内部で熱分解ガスが充満した後ドアの開放などで空気が供給されて激しい燃焼が発生するバックドラフト現象によって爆発による二次被害のリスクがあります。鉄骨や鉄筋造りとなっている工場は気密性が高く、火災発生後に空気不足により一旦鎮火している室内に、扉を開けることで新鮮な空気が一気に室内に流れ込み入り残っていた可燃性ガスの火種に引火し爆発的に火が燃え広がり被害が大きくなります。また粉体を扱う工場では粉塵爆発の危険性があります。
2.工場火災の原因
2-1.溶接の火花が原因の工場火災
溶接作業時や溶断工事の際に発生する火花が可燃物に着火することが工場火災の原因となります。飛散される高温の溶接金属や火花の範囲は5m~10mとも言われ、周囲に気を配り作業をおこないながらも想定以上の広範囲に飛散するため注意が必要です。「溶接光対策フィルムのカタログ」はこちらをご覧ください。
2-2.静電気が原因による工場火災
可燃性の高い気体や粉体などを扱う現場では、静電気による火花放電を警戒しなければなりません。静電気の火花でも、引火するリスクがあり、静電気が原因で引火や爆発が起こり、重大な火災事故に発展するケースがあります。「静電気対策商品のカタログ」はこちらをご覧ください。
2-3.電気機器が原因による工場火災
電気機器のコンセントと電源プラグの隙間にホコリが溜まり、電源熱からホコリに引火しするトラッキング現象により火災が起こることがあります。そのほかにも工場での電気工事の際の不良施工や、電気機器の劣化によって絶縁性能が低下し漏電することも工場火災が起きる原因となります。
2-4.可燃性ガスが原因の工場火災
石油精製工場や化学合成プラントなどでは、可燃性ガスや可燃性の液体が蒸発した水蒸気が放出されることがあり、これが電気火花や高温の物体に接触すると火災・爆発につながります。また不完全燃焼による一酸化炭素中毒による二次災害を引き起こす危険性もあり注意が必要です。前述の火災の種類ではガス火災に含まれます。「可燃物質保管用の不燃ブースの事例」はこちらをご覧ください。「不燃シートのカタログ」はこちらをご覧ください。
2-5.放火や過失が原因の工場火災
不審者による放火や喫煙所でのたばこの不始末、機械の不適切な操作のように工場に勤務している人の過失など、人為的な理由や過失で工場火災が発生することがあります。 出火原因は不明や調査中になっていることも多く、人為的な理由による出火が含まれます。前述の火災の種類ではA火災(普通火災・一般火災)に含まれます。
3.工場火災の事例
3-1.2023年の主な工場火災事例
2月 溶接中の工場火災
2023年2月に岩手県の機械工場で工場火災が発生し人的被害はありませんでしたが、工場の天井が一部剥離し操業も一時的に停止しました。工場内の修繕工事の溶接作業中に火花が天井に引火したことで火災が起きました。
3月 ガスボンベ爆発の工場火災
2023年3月に福島県のガスボンベ製造工場で工場火災が発生し負傷者4名の人的被害と生産設備全焼の物的被害に至りました。
5月 粉塵爆発による工場火災
2023年5月に福井県の住宅資材工場にて火災が発生。工場では木材チップを圧縮し、板を製造していたということで、何らかの理由で木の粉による粉じん爆発が発生したと推測されています。
6月 化学物質引火の工場火災
2023年6月に新潟県の化学品工場で配管のメンテナンス中に爆発事故が発生し、死者1名、負傷者2名の人的被害となりました。火災原因は配管の内壁に付着した化学物質が電動のこぎりの熱で発火したと発表されました。
8月 木材加工工場での工場火災
2023年8月に茨城県の木材加工工場で発生した工場火災では人的被害はありませんでしたが、鎮火までに2日間を要しました。製材する機械からの出火とみられています。
11月 化学品工場での爆発による工場火災
2023年11月に山口県の化学品工場で工場火災が発生し死者1名、負傷者1名の人的被害に至りました。工場火災の原因については調査中とのことです。
11月 溶接火花が原因による工場火災
2023年11月に和歌山県の鉄工所で工場火災が発生し人的被害はなかったものの、建屋が全焼する物的被害が発生しました。溶接作業時の火花が段ボールに引火したことが火災原因とみられています。
12月 化学品工場での工場火災
2023年12月に埼玉県の化学品工場で発生した工場火災で負傷者1名の人的被害となり、物的被害と火災原因については現在調査中とみられています。
3-2.主な過去の大規模火災事例
2017年 化学品工場での爆発火災
2017年12月に静岡県富士市の印刷インキ用原料製造工場で粉塵爆発による工場火災が発生しました。死者1名、負傷者14名の人的被害、多数の建物損壊、近隣住民の避難が必要なほど周辺にも影響が及びました。工場火災の原因は調査の結果、工場内の粉塵が静電気による火花から着火し粉塵爆発が発生したことによるものと報告されています。
2020年 半導体工場での大規模火災
2020年10月に半導体製造工場で大規模な工場火災が発生しました。クリーンルーム内での出火と特定されましたが、火災原因の特定には至りませんでした。クリーンルーム内の生産装置や付帯設備が広範囲に焼損し、検査装置や事務所にも焼損がおよび操業再開まで長期間を要しました。幸いにも従業員への人的被害はありませんでした。
2021年 半導体工場での大規模火災
2021年3月に茨城県の電子部品工場で発生した工場火災は、調査結果からメッキ装置が出火原因であることが判明しました。人的被害や工場建屋の被害はありませんでしたが、一部設備に被害が出て4月に生産を再開しましたが、完全復旧までは火災発生から3ヶ月の期間を要しました。
4.工場の火災対策のポイント
4-1.工場火災の初期消火の重要性
工場火災の被害を最小限に抑えるためには消防への通報はもちろん初期消火が重要です。電気系統や設備からの出火の場合は水を使用しての初期消火で問題ありませんが、化学薬品や工業油などが燃えている場合は備え付けの消火器を使用して消火します。
4-2.消防設備の設置による対策
工場火災が発生した際に被害を最小限で抑えられるよう消防法で消防設備の設置や届け出が義務付けられています。
・消防設備の設置内容は工場の構造と延べ床面積によって決定される。
・消防設備の点検は3年に1度実施する必要があり、点検結果を消防庁や消防署長へ報告する必要がある。
・報告義務に違反した場合、30万円以下の罰金もしくは拘留の罰則がある。
①火災報知器の設置
火災が発生した際に検知し音声やベルで工場内に知らせます。延べ面積500㎡以上もしくは11階以上の階の建物で設置する必要があります。
②火災通報装置の設置
消防へ火災が発生したことを自動で通報する設備で、延べ面積1,000㎡以上の建物で設置する必要があります。
③消火器の設置
火災が発生した初期段階での消火のために消火器を使用します。延べ面積150㎡以上の建物で設置する必要があります。
④屋内消火栓の設置
屋内で消火活動を行う際の水を確保するための設備で、延べ面積700㎡以上の建物で設置する必要があります。
⑤屋外消火栓の設置
屋外で主に工場に隣接する建物への延焼を防ぐ消火活動で使用し1階の床面積の合計が3,000㎡以上の建物で設置する必要があります。
⑥スプリンクラーの設置
火災が発生した際に検知し天井から自動で放水し消火する設備で、ラック式倉庫または天井の高さが10m以上、延べ面積が700㎡以上の建物に設置する必要があります。
⑦誘導灯の設置
火災避難時に避難経路を示すために使用され、すべての工場で設置する必要があります。
4-3.工場の小まめな清掃による日常的な対策
工場火災の原因で記載した通り、電気機器やコンセントにホコリが溜まることが火災の原因となります。そのため日常的に清掃を行いホコリが溜まらない環境にすることが重要です。また乾燥を防ぐため工場の周囲に水撒きをおこなうことで湿度を上げることもできます。消防設備や防火設備の定期的なメンテナンスと合わせて清掃活動の心がけが大事になります。
4-4.従業員への避難訓練や安全教育による対策
万が一工場火災が発生した際に緊急事態の中で的確に迅速な対応ができるよう、防火対策だけでなく火災時の一連の避難と消火の動作を繰り返しおこない従業員に徹底できるよう覚えることも重要です。火災の発生状況や出火原因を把握し、不測の事態でも的確に行動できるよう役割分担をしていただくことも有効です。
一定規模以上の事業所では消防法第8条に定められている通り、防火管理者を選任し消防計画に基づいて消火通報・避難訓練を実施する必要があります。
4-5.BCP対策の策定
工場火災が発生しないよう対策をおこなうことと同時に、万が一工場火災が発生し被害を受けた際に早急に復旧し事業継続できる計画を策定することも重要です。BCP対策とは災害時に迅速に復旧し事業継続を目的として実施する対策のことです。詳しくは「工場の災害対策とBCP対策」をご覧ください。
5.火災対策のよくある質問
Q1.工場の防火区画とは何ですか?
万が一の火災発生した際に、炎や煙を最小限にし被害を抑えるために防火区画は設けられています。防火区画は建築物の面積や使用用途によって区画基準や区画方法が分けられているため、詳しくは「建築基準法施行令112条の第7〜10項」をご覧ください。特定の条件を満たす建築物に対しては建築基準法により防火区画の設置は義務付けられています。
Q2.特定防火対象物と非特定防火対象物の違いは何ですか?
特定防火対象物は不特定多数の対象が決まっていない人々が出入りする百貨店やホテルや、災害時に避難困難な人が出る可能性のある病院や幼稚園などの施設があげられます。それに対して非特定防火対象物は収容人員50人以上で、工場や倉庫、共同住宅、公衆浴場などが該当します。
Q3.2023年に改正された消防法は何ですか?
2023年4月1日に消防法の法改正が行われ、不活性ガス消火設備のうち二酸化炭素消火設備の設置基準が改訂されました。詳しくは消防庁が発行している「二酸化炭素消火設備に係る基準改正のポイント」をご覧ください。
Q4.不燃と防炎の違いは何ですか?
不燃とは「一定時間燃え抜けが無い(一定時間炎が貫通しない)」を意味し、防炎とは「燃え広がりにくい、自己消火性がある」を意味します。根拠法令も異なり、不燃は建築基準法、防炎は消防法に規定があります。詳しくは「防炎と不燃の違い」に記載しており、不燃素材と防炎素材の性能比較動画も掲載しております。
6.まとめ
工場火災の原因は「溶接金属」、「静電気」、「電気機器系統」、「可燃性ガス」、「粉塵爆発」、「放火・過失」などがあり、空気が乾燥する時期に火災が発生しやすくなります。住宅火災と比較し可燃性物質や危険物を保管している工場では万が一火災が発生した際に被害が大きくなるケースが少なくありません。
工場火災の防火対策は消防設備や防火設備による設備対策だけでなく、危険物の整理や、日常的な清掃、避難訓練など工場で働く従業員でできる対策もあり、昨今では災害時に迅速に復旧し事業継続できるよう計画を策定したBCP対策も事業継続において重要視されています。
6-1.お問い合わせ
6-2.関連コラム
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